spatium artis ( 2009.5.26 updated )
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  受胎告知
1489-90
Tempera on panel,
150 x 156 cm
Galleria degli Uffizi,
Florence

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■梗概

 「受胎告知」が画家の創造力を誘引してやまないだろうと思うのは、そこに、極めて複雑な精神的要素がみられるからである。厳かなる神の意志を伝えにやってきた大天使ガブリエルの篤実と誠意、驚きあきれながらも神の意志を受け入れんと欲するマリアの動揺と敬虔と純粋、それらを絵に盛り込まなければならない。これは画家にとって大仕事である。
 ボッティチェッリは、フィリッポ・リッピの弟子である。この「受胎告知」をみると、マリアの、身を捩りながらも神意を受け入れんとする姿形はリッピの「受胎告知」に大いに影響を受けていることが看取される。ボッティチェッリの「受胎告知」は、リッピの「受胎告知」同様複数伝えられているが、ウフィツィ美術館に所蔵されているこの作品は最も鮮やかで美しい。

ガブリエルの祝福を受け、驚き呆れながらも神意を受け入れんとするマリア。その複雑な内心を示して余りある見事な構図・表情である。

聖母マリアの象徴である、赤と青の召し物を着け、頭には光輪が見られる。また、その身を透明のヴェールが覆っている。マリアの左手側に見られるものは書見台で、まさしく受胎告知に関係する部分、イザヤ書7:14 《見よ、処女孕みて子を生まん。その名をインマヌエルと称うべし》の部分を読んでいるとされる。書見台はこの受胎告知のテーマによく見られる小物である。

左手は戸惑いや謙虚さ、右手は神への従順を示しているといわれる。
神意を神妙に伝える大天使ガブリエル。
その手に持たれているのは、純潔の象徴である百合であり、テーマ「受胎告知」にはしばしば登場する植物である。

彼もまたマリアと同じく透明のヴェールのようなもので覆われており、神の守護を示しているようにも思われる。
ガブリエルの向こうには、白い壁にて囲われた、所謂「閉ざされた園」が描かれている。処女懐胎の神秘の象徴である。

向こうに見える背の高い木は、ガブリエルを象徴するオリーブの木だろうか。オリーブはガブリエルを示す(例えばシモーネ・マルティーニ「受胎告知」も参照)とともに、よく知られているように平和のアトリビュートでもある。

窓の向こうには見事な遠近法にて、城と、河のある風景が描かれる。空気遠近法をつかって少しぼかすとたちまちレオナルド・ダ・ヴィンチの絵になりそうな風景である。
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