spatium artis ( 2014.12.19 updated )
St Augustine
  書斎の聖アウグスティヌス
1480
Fresco, 152 x 112 cm
Ognissanti, Florence

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■梗概

 オンニ・サンティ聖堂、ギルランダイオの《書斎の聖ヒエロニムス》に対になって提示されている、ボッティチェリの《書斎の聖アウグスティヌス》である。
 アウグスティヌス(A.D..354-430)とはキリスト教の聖人の一人。「西欧の教師」と尊称される。北アフリカ・ヌミディアに生まれ、当初はマニ教、またはグノーシスなどに触れるが、のちキリスト教の真理を得て洗礼を受ける。ネオ・プラトニズムを受け入れた上でキリスト教的に受容し、それを超克し来った彼は、のちの宗教改革の時代、カソリックにも、またプロテスタントにもひとしく大きな影響を与えた。近代初期の神学問題は畢竟、アウグスティヌスにより提起されたものと言って間違いではない。
 彼が著述の最中に霊感を受けた瞬間を捉えたこの作品は、アウグスティヌスの内面を描いて余りあるものである。ボッティチェッリはこの作品により、名声と信用を大きく高める。
 この作品は非常な賞賛を博したが、それは彼が聖人の顔に、高邁で難解な事柄の探求に絶えず没頭している知的な人物に特有の深い瞑想と鋭敏な繊細さを描き出したからであった。(ヴァザーリ)
 余談ながら、リーゼンフーバーの名著『西洋古代・中世哲学史』の平凡社ライブラリー版装丁はこの絵を表紙画として用いている。本の内容を誠実に示して余りある素晴らしい装丁だと思う。

右手を胸の前にかざしているアウグスティヌス。
手は黙考と瞑想中の様を示し、神の光の方向を向いた眸は啓示を受けた瞬間を捉えている。

右手の向こうにはミトラ(司教冠)が置かれてあり、質感の描写に優れる。
クロスの波打つ姿、反射する部分をぼかすことにより、立体感と光の効果を描写している。
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