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spatium artis ( 2015.1.26 updated )
Les grandes miseres de la guerre
  戦争の惨禍
1633
Etching
British Museum,
London

【部分図。クリックにて拡大】

■梗概

 「戦争の惨禍」連作のうちの1枚。これは18枚あるうちの第11枚、"La pendaison" と銘打たれている。つまり「絞首」もしくは「絞首刑」である。
 連作はストーリー仕立てになっており、軍隊の人間が村落で略奪を行い、それが発覚して憲兵により処罰され、または村人によって私刑に遭う姿が描かれている。
 この意味を知るには、歴史的背景を知らねばならない。

 この版画が制作された1633年当時、ヨーロッパは30年戦争の真っ只中、結局戦争は1648年に終結するので、ちょうど折り返しの年に当たる。当時の軍隊は殆どが傭兵であり、戦がある際にだけ臨時雇いで戦に参加することがほとんどであった(もっというと、この30年戦争の最中、彗星のようにあらわれたデンマークのグスターフ・アドルフによってはじめて「国民軍」が創設された)。当然補給形態もしくは補給物資も満足なものがなく、戦闘員の多くは「現地調達」を行った。いわゆる「略奪」である。したがって当時の軍人たちは「鎧を着た強盗」と呼称された。
 すなわち、ここで吊るされたり焼かれたりしている戦闘員、恐らく傭兵は、別に伊達や酔狂や私腹を肥やすために略奪を行っているのではなく、そうしないと食えないから行っているのであり、そう考えればこう、まるで「奇妙な果実」のように吊るされている人々を、昨今流行りの《自業自得論》で笑えなくなるというものでもある。


神父と、これから吊るされる人、そして刑吏。

この左側には、既に絞首されて吊り下がっている人間が多数ひしめいている。強烈な光景である。略奪に走らせたのも戦争、ということは敵だけではなく味方に殺されるのも戦争である。
そう考えると「戦争の惨禍」の意味が染み渡る。

なお、この《戦争の惨禍》連作の特集ページを開設したので、どのような流れか参考にしていただきたい。
(表紙をクリックして特集ページ)
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