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spatium artis ( 2015.1.21 updated )
Marine avec Acis et Galatee
  アキスとガラテア
1657
Oil on canvas,
100 x 135 cm
Gemaldegalerie,
Dresden

【クリックにて拡大】

■梗概

 この絵はギリシア神話に範をとっている。
 仮の天幕のなかで愛を育んでいるのは美青年アキスと、海神ネレウスの娘ガラテア。ガラテア自身、海の女神のひとりである。
 そもそも風景画描画を愛するクロード・ロランがまるで風景画を描く申し訳のように神話に範をとったような主題であり、夕暮れの海辺、やや湿ったような大気までとらえた、風景画としても実に見事な作品だが、実はこの絵にはもうひとつ哀切感をもよおす物語が描かれている。

 右側中央に描かれた小高い丘。
 そこには何事やらん、大きめのサイズの人型生物が寝っ転がっている。
 もちろん左側に描かれた杉のような針葉樹の根元にも、海辺の昼寝を楽しんでいる人が描かれているわけで、気づかなければその類の人間だと思われても仕方がない。
 しかしながら右の小高い丘で寝そべっているのは、一つ目の巨人ポリュフェモスである。
 ポリュフェモスは、透き通るような白い肌をもった娘ガラテア(だいたい「ガラテア」という名前自体が「乳白色」を意味している)に初めての恋をした。
 美女ガラテアに言い寄ったポリュフェモス。
 しかしポリュフェモスは一つ目の怪物。面食いのガラテアは歯牙にもかけない。
 そしてガラテアは、この絵に描かれている美青年アキスを見初め、アキスに強引に言い寄る(この辺りはさすが海神の娘である)。そして満更でもないアキス。やがて二人は愛しあう。
 それとも知らずポリュフェモスは、丘の上で葦笛シュリンクス(シュリンクスは性愛的情愛の象徴である)を吹く。
 そう、恋する男は誰もが詩人である。怪物ポリュフェモスも例外ではなく、「ガラテア、君は雪の如き木犀よりも白く……」とガラテアにセンチメンタルな詩を捧げる。そのような風景である。

 やがてポリュフェモスは二人が愛し合っているところを目撃し、嫉妬に狂い、その強力にて岩をぶん投げ、アキスを殺してしまうのだが、それはこの風景の後のお話。
 この風景、夕暮れ手前の海辺の風景。少女に憧れる巨人と、そして別の男を愛するその想い人。ドビュッシーの「シシリエンヌ」のような切ない音楽が流れている。
 これ以上ない、音楽的絵画であるように思われる。
 だが、この風景を見る限り、中央に描かれている幸せな二人が、ポリュフェモスの葦笛をまるで逢瀬の心地よい BGM として聴いてしまいそうなのがまた切ない。


簡単な天幕のなかで愛し合おうとするアキスとガラテア。
そして、彼の肩に積極的に両手をまわすその様子から、ガラテアがむしろ主導権を握っていることがわかる。

『変身物語』によるとアキス16歳。彼自身は森の神パンの息子である。

白い花咲く丘の上で、シュリンクスを吹くポリュフェモス。
恋する男は皆、詩人である。
彼はここで、ガラテアに捧げる詩を吟じつつ、葦笛を吹いている。やがて哀しい結末に至るとは思いも寄らない。

この風景の舞台はシチリアであるという説があるが、シチリアの海辺にはさぞ切ないメロディが流れていることだろう。
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