■狂言名曲紹介
蝸牛
山伏 「そなたは真実、カタツムリを尋ぬるの。
太郎 「真実、尋ねます。
山伏 「何を隠そう、身共でおりゃる。
太郎 「ヤアヤア、すればこなたが、カタツムリ殿、でおりゃるか。
山伏 「なかなか。
【小名狂言】

◆登場人物
 シテ 山伏
 アド 主
 アド 太郎冠者

◆概要
 「駆け出」の山伏というのが、まず登場します。「駆け出」とは、駆け出しという意味で、まだ初心者マークの、という意味です。宿を出たのが早かったのでさっそく眠くなった、というて、適当な藪を見つけて横になります。

 いつものように太郎冠者とその主人が登場します。主人は「叔父じゃ人」の長寿を願い、カタツムリを叔父じゃ人に進呈したいので、オマエ行ってとってこい、と太郎冠者に命じます。太郎冠者はカタツムリを知らぬとのべてその旨たずねると、主人はカタツムリの特徴を教えます。まず@頭が黒いもので、A腰に貝をつけている、そしてB角を出す、ものじゃと言い含めます。また、年月を経たものは人ほどもあると述べます。
 藪に行ったら居るので立派なのを取ってこい、はよ行けと命じられた太郎冠者は、主人のせっかちさにぼいぼい呟きながら藪へ行き、カタツムリを探します。すると、山伏が目の前に眠っている。太郎冠者は、「ときん」をつけている山伏を眺めて、「頭が黒いあなたは、もしかしてカタツムリさん?」と尋ねます。カタツムリかと尋ねられた山伏は最初びっくりしますが、いたずら心がでてきて、ひとつ太郎冠者を担いでやろうと思い付きます。
 「身共こそ、カタツムリでおりゃる!」
と名乗り、その証拠をみせてくれと尋ねる太郎冠者に、@頭が黒い、とはこの頭につけた「ときん」のことで、A腰に貝をつけている、とはこの腰に付けた貝袋のことだと答えます。「ところで角は?」と太郎冠者に畳みかけられて若干詰まりますが、篠掛(すずかけ)といって山伏が肩から提げた装束を頭に持ち上げてごまかします。
 これはまた大きなカタツムリを獲たと喜ぶ太郎冠者は、是非ウチに来てくれと山伏に頼みますが、山伏は「タダでは行けぬ」、藪を出ていくには、囃しものがなけりゃだめだ、囃しもので行くならば、行ってもいいといって太郎冠者に囃しを所望します。どう囃しますか?と尋ねる太郎冠者に山伏は「雨も風も吹かぬに、出ざ釜打ち割ろう、出ざ釜打ち割ろう」というて囃せといいます。囃しものは得意じゃというて太郎冠者が喜んで囃すに乗って、山伏も「でんでんむしむし、でんでんむしむし」と踊りまわります。

 なかなか太郎冠者が帰ってこないので心配した主人が藪にきてみると、太郎冠者が山伏と踊り狂っている、聞けば太郎冠者「上々のカタツムリを手に入れましたので、おっつけ連れて帰ります」といいます。オマエあれは山伏で、まんまと担がれているではないかと主人は述べ、二人して山伏を打擲してやろうとしますが、なんど抗おうとしても「でんでんむしむし」のリズムに巻き込まれてしまい、囃し合いながら退場します。

◆みどころ
 やはり「雨も風も吹かぬに出な釜打ち割ろう」「でんでんむしむし」と囃すところで、リズム感あふれる演者に出会うたならば、観劇後もしばらくくせになるほどの魅力があります。

(2008.1.17 updated.)
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