spatium artis ( 2015.1.7 updated )
Nederlandse Spreekwoorden
  ネーデルランドのことわざ
1559
Oil on oak panel,
117 x 163 cm
Staatliche Museen, Berlin


【部分図。クリックにて拡大】

■梗概

 このブリューゲルらしい、風俗画とも寓意画とも見られる作品は、当時のネーデルランドに見られた諺をそれぞれ象徴的にテンコ盛りに投入しているものである。
 元々、この作品の原題は《青いマント》もしくは《世の愚かさ》。真ん中やや左よりに自分の主人に青いマントをかぶせている女性が見られるが、この赤い服の女性は、「彼女は夫を裏切っている」という諺を実行しているところである。あるいは「愚かさ」については、ヒエロニムス・ボスと同様、ブリューゲルの中心テーマの一つである。

 ブリューゲルはこの作品のなかに非常に多くの諺を盛り込んでいるが、出てくる人間はどれもこれも、ブリューゲルの他作品にも見られるような、愚鈍な放心したような表情をしている。


この、塔のようなものから川べりに突き出た出窓のようなものは当時のトイレである。そこから二人、尻だけ出して、それぞれ排便をしている。
「同じ穴を通して排便する」というのは《彼らは親友である》という意味の諺のようであるが、現在の価値観でいえばさすがにインティマシーの近づきすぎのような気がしないでもない。
「青いマントの女」の上に、左側には「日々を籠で運ぶ」人があるが、これは《無意味なことで時間を浪費する》という意味がある。

また「悪魔にろうそくを灯す」人があるが、これは《無節操にすべての人におべっかを使う》という意味。

その右側に見える「悪魔の下に告解に行く」人の意味は《敵に秘密を打ち明ける》という、それぞれの諺を表現している。
左側の「柱をかじる人」は《偏執狂的な人間、もしくは偽善者》の謂。

また、「片手で火を運び、もう片方の手で水を運ぶ女」は《信用出来ない人》の謂である。
既に「仔牛が溺れたあとに穴をふさぐ」人は、《無意味な事後対策》を示す。

その右下のボウリングの玉みたいにうずくまっている人間は「世渡り上手は身をかがめる」という諺を暗示しており、《出世のために狡猾な手段を使う》ことを意味している。

その上は「豚の前にバラを撒く」人間。《意味のないものを与える;豚に真珠》を意味する。

当該画像右隅の男は左手で地球を回しているのだが、「親指の上で廻る世界」という諺を暗示しており、この者の表情にも現れているように《意のままに世界を操る》という意味である。
> 美術 top へ戻る
"San-Shin-An" is produced by kikuitimonji (UME-3) 2007-2015
All rights reserved.