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spatium artis ( 2015.1.17 updated ) | |||
Patio del hospital psiquiatrico | |||
精神病院の中庭 | |||
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【部分図。クリックにて拡大】 |
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■梗概 1792年に患った大病で耳疾が悪化していた当時のゴヤは、マドリードを離れ、湯治などを行ったが効果なく、自らの病気のことを考えては心乱れる日々を過ごしていた。1793年には完全に聴覚が失われ、宮廷画家でありながら公的な注文を受けることが困難になっていた。 そんな中、彼は生活のためにタブロー、つまり居室用の絵を描き始める。その中のひとつが、ブリキ板に油彩画を施したこの《精神病院の中庭》である。 自由時間に中庭に出てきているらしいこれら患者の群は、陽の光を背に活気溢れる様子であるが、しかしその周囲にはかくも高い壁がそびえている。そして陽の光は直接的ではない。たったこれだけの場所で、しかしわずかばかりの自由を、まさにわずかばかり差してくる光を受けるのと同じように、どうにか享受しようとする患者たち。悲しく、いじらしくも、実に美しい。 喜んでいる姿も、鞭打とうとする看守も、そして高い壁も、わずかばかり差してくる陽光も、よくも悪くも恐ろしくも人間をむき出しで示している。 |
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コサックダンスのような身振りの狂人の向こうには、看守の持つ鞭が陽の光を浴びてしなっている。 恐らく真ん中でレスリングをする人間をこれから鞭打つのであろう。 この絵の中で正常人は当然看守だが、振る舞いのみを見る限り、もっとも狂っているように見えるのもまた看守である。 |
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真ん中でレスリングのような相撲のようなことを行う二人は二人して素っ裸である。 右隣に応援しているらしい患者が居るが、それ以外はレスリングはおろか、看守の鞭に対しても無関心な風情で、ただ自分の世界で或いは喜び、或いは哄笑し、或いは恐懼している。 |
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恐らく薄暗い房から中庭に出て喜んでいる狂人の女性。陽の光を全身で浴びるかのように両手を広げている。目の前には看守の鞭がある。 恐らく彼女もじき鞭打たれるのであろうけれども、そのように考えるとのちのゴヤ自身の代表作にもなる、1814年の《1808年5月3日、プリンシペ・ピオの丘での銃殺》にこのモチーフは通底している。 |
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