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spatium artis ( 2015.1.17 updated )
Saturno devorando a un hijo
  我が子を食らうサトゥルヌス
1819-23
Plaster mounted on
canvas,
146 x 83 cm
Museo del Prado, Madrid

【部分図。クリックにて拡大】

■梗概

 晩年のゴヤは、自らの別荘「聾者の家」にて、自分のための連作《黒い絵》14枚を制作する。その中のひとつがこの《我が子を食らうサトゥルヌス》である。

 最初に触れたもの全てを驚愕恐怖させるこの名画は、ギリシア神話に範をとっている。
 ウラノスの子クロノス(ローマ神話でいうサトゥルヌス)は、地下世界に投げ込まれた復讐として、父ウラノスを鎌を用いて去勢した。のち、ウラノスはクロノスに、「お前は自分の息子によって斃される」と予言される。予言の成就を恐れるクロノスは、子供が生まれてくると同時にその子をむさぼり食った。

 尤もギリシア神話では、ゼウスを食おうとしたがレイアの計略に引っかかったクロノスが岩を飲み込み、やがて飲み込んだすべての子供を吐き出した、いっぽうゼウスはクロノスを撃破して地上世界に君臨した、という話になるのだが、ゴヤのこの絵のように咀嚼してしまったら後で吐き出しても余り意味が無いようにも思われる。

 この絵は元々、「聾者の家」の漆喰の壁に描かれており、ゴヤの死後キャンバスに移されたが、その際に損傷が激しく、大掛かりな修復作業が行われている。

狂気に満ちたサトゥルヌスの表情。
見開かれた目は見る人を驚愕恐怖させるに十分である。

この表情は、ゴヤの若いころの《イタリア画帖》にスケッチされている、「古代のグロテスクな仮面の素描」に類似しているが、「仮面の素描」が固定的でどこか喜劇的(それは狂言の《武悪面》に似ている)なのと比し、どこまでも陰鬱で真剣である。
サトゥルヌスの下肢は大きな修復作業がかかっているとのことだが、ゴヤのオリジナルでは性器が勃起していた。

生命を与えた父がその人生を奪う、という皮肉を示しているともいえようし、また生命を奪いながら、同時にあるいは平行して新しい生命を与えるもの、としてのサトゥルヌスを描いていた、ともいえる。

単純に剥落したのか、それとも道義的理由にて修正がなされたのかは不明だが、勃起あってしかるべきである。勃起がなければこれはただ子供を食っている暗い気狂いピエロの絵である。
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