コンテンツ > 美術 > グリューネヴァルト > イーゼンハイム祭壇画「キリストの磔刑」 | |||
spatium artis ( 2009.4.8 updated ) | |||
Isenheimer Altar | |||
イーゼンハイム祭壇画「キリストの磔刑」 | |||
|
【部分図。クリックにて拡大】 |
||
■梗概 1510年から15年にかけて、グリューネヴァルトが描いた祭壇画の傑作。彼の最高傑作でもある。 この作品はイーゼンハイム近郊、アントニウス修道院のために描かれた。アントニウス修道院もまた修道院の常で、共同体の中心地であり同時に一種の病院の役割をも果たしていた。この絵はアントニウス修道院の付属施療院に置かれていたと考えられ、病人の心身にわたる苦痛を、キリストの痛みと同感させて昇華するため、この絵において痛烈な表現がなされたとも考えられる。 祭壇画の例に漏れず、このイーゼンハイム祭壇画もまた、複数のパネルによって成立しており、その内容は聖母子図、受胎告知などキリスト教絵画のオーソドックスな主題で構成されている。しかし中でも最も有名でかつ衝撃的なものがこの「キリスト磔刑図」である。 |
|||
磔となったイエス。 十字架の上部に提げられた板には"I.N.R.I"と書かれており、"Iesus Nazarenus Rex Iudaeorum" (ナザレのイエス ユダヤの王)の略。イエスの、ユダヤ人によってこじつけられた罪状は「ユダヤの王を騙った」ゆえの死罪、ということであった。空には光がなく、暗鬱な終末が兆している。 イエスはやせ衰え、傷だらけの体からは、血と膿が吹き出している。腕はねじ切れんばかりにねじれ、ややもすると肩間接が外れている。極めてリアリスティックな表現である。 |
|||
向かって左側は新約聖書の世界が描かれている。 哀しみのあまり卒倒しつつある聖母マリア。 赤い衣にて聖母を支えているのは福音記者聖ヨハネである。生前のキリストは彼に、マリアの世話を頼んだ。 その右にあるのはマグダラのマリアだが、「生身の人間は聖人よりも小さく描く」通例により、少し小さく描かれている。彼女がマリア・マグダレーナであることは、右下に描かれている香油壺でわかる。いずれの人物も哀しみに支配されている。 |
|||
向かって右側は旧約聖書の世界。 見られるのは洗礼者ヨハネであり、時代的にいえば、キリストが磔にあうしばらく前に斬首されているため、キリスト磔刑図に彼が取り上げられるのは比較的珍しい。 彼の口元には「彼は生き、わたしは滅びなければならない」という聖書の文言(ヨハネの福音書 3:30)が書かれている。 足下には十字架を背負った羊があり、これはいうまでもなく、殉教のしるしである。 |
|||
> 美術 top へ戻る | |||
|