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spatium artis ( 2009.3.31 updated ) | |||
Los Ninos de la Concha | |||
貝殻の子供たち | |||
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【部分図。クリックにて拡大】 |
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■梗概 キリストと洗礼者ヨハネを併せ描くという構図は、宗教画としては珍しいものではないが、この絵は幼児としての両者が立ち会っている。当時、幼児の姿で描かれる聖人像はパトロンたちの間で比較的人気があり、そのような需要に応えた作品であると推察される。 キリストが、洗礼者ヨハネに水を与えている。洗礼者ヨハネはそれを受け呑んでいる。上空に浮遊感あふれるプットの姿も見えるが、この絵を支配しているのは無時間性・無音性である。キリストの目も、ヨハネの目も、また左に描かれた羊も、皆そろって水をたたえた貝殻に注目している。キリストが差し出した、画の中心に据えられた貝殻に、周囲の時間が巻き取られているような状態である。 |
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キリストから水を受け取る洗礼者ヨハネ。 肩に掲げている粗末な木の棒は実は十字架を形成しており、そこに巻き付けられた布のようなものには" ECCE AGNUS DEI "すなわち「見よ、神の羊を」と書かれている。 " AGNUS DEI "とはいうまでもなく、屠られたキリストを指す。 洗礼者ヨハネは、言い伝えにあるようにしばしば襤褸を着てやせ細った姿として描かれる。ここにムリーリョによってプット的に描かれたヨハネも、やはり何処か痩せており、そしてなにより襤褸を纏っている。この辺りの表現は、宗教画というよりはむしろ彼が描く風俗画のものである。 |
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ヨハネに水を与えるキリスト。 彼は見るからに聡明で、また威厳高い。 後方の、上のあたりに見られるのは、ムリーリョお得意のプット(ぷくぷく太った天使)の表現。 |
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キリストの足下に描かれた羊。 洗礼者ヨハネの持つ貝殻を、じっと見つめている。 ここに小羊が中心に向かって画面を徹しているからこそ、時間が停止したような感覚が発生する。 勿論いうまでもなく羊=神の羊=殉教が予め約されているキリスト、のことであり、羊はしばしばそれらのアトリビュートとして画面に描かれる。 |
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