spatium artis ( 2015.1.18 updated )
Danse a la musique de temps
  時の音楽にあわせた踊り
c. 1638
Oil on canvas,
83 x 104 cm
Wallace Collection,
London

【部分図。クリックにて拡大】

■梗概

 この《時の音楽にあわせた踊り》は元々、ジュリオ・ロスピリオージ、のちの教皇クレメント9世のために描かれた。
 右隅にいる「時」のリラ(竪琴)によってかき鳴らされた音楽にあわせて、真ん中の4人が舞踏をする姿であるが、この寓意画の解釈について、完全な結論が出たとは言いがたい。もっといえば、美術史家ヴァルター・フリードランダーによると、これらの寓意画については、プッサンが明晰な意味を与えている、もしくは意味を意識しているとは言いがたいようである。
 一般的には真ん中の4人はそれぞれ「季節」を表しており、輪舞にて時の流れる様子を描写している、と言われている。

中央に踊る4人。
一節によると一人だけ見られる男の踊り手はバッカス(酒神)であり、秋を表しているということである。

或いは別の解釈では、この4人は人生の時間自体をあらわす、つまり、貧乏から仕事をし、楽しみに耽って再び貧乏になる、という様子を語っているともいわれる。

左右のプット。

左のプットは縦笛を吹き、右側のプットは時が流れることを示す砂時計を持っている。

楽しき時と、流れる時、の寓意であろう。
チャリオットに乗り、堂々たる姿で空をゆく太陽神アポロン。

アポロンが何故にここに登場しているかは分明ではないが、太陽神アポロンがバッカスを介し、普段の生活に苦しんでいる人類に酒を与え、多少なりの楽しみを提供したと考えると、ここに居ても悪いことではない。

ただ一般的なアポロンの登場と比べると、この存在は大変静的スタティックである。

双面神ヤヌスのように見えるが、一説ではバッカスの若いころと年取った時代の双面彫刻だともいわれる。
年取ったバッカスが、やや渋面でダンスを眺めている。無為に、また楽しみに過ぎた過去を眺めて物言いの一つでもあろうか。
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