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■狂言名曲紹介
通圓
通円  「通円が茶を飲み尽くさんと、名乗りもあへず三百人、
地謡  「名乗りもあへず三百人、
通円  「名乗りもあへず三百人、口脇を広げ茶を飲まんと
【鬼山伏狂言】

◆登場人物
 シテ 通円
 アド 旅僧
 アイ 所の者

◆予備知識
 狂言といえば、シテとアドのドタバタ喜劇、というのが一般的で、それらはなんの予備知識もなくても一見で十分に面白いというものが多いのですが、時折能楽の予備知識が必要なものもあります。
 この《通圓》という曲はまさしくそれであり、この曲は有り体にいえば能の《頼政》をベースにして完全に換骨奪胎したもの、つまり《頼政》を知らないと何が面白いのかよくわかりません。《頼政》の説明自体がまず予備知識となります。
 《頼政》についての紹介は、当Webサイトの名曲紹介をご覧頂くとしまして、ここで簡単にその筋を述べますと、源頼政が宇治で三百人の相手方を前に孤軍奮戦し、最後は扇を敷いてその上で討死するという物語です。これを狂言《通圓》は、通円という茶屋坊主が宇治橋供養の際に次々と来客に茶をたて、遂に団扇の上で点て死にをしたという話にしております。出てくる文言も洒落のように変換されており、《頼政》を知っていればいるほど面白いという曲となっております。
 なお、間の者、囃子、地謡など完全に能仕立てとなっております。

◆あらすじ
 まず囃子とともに旅僧が登場し、東国から出てきて都に上ろうとしていると述べます。宇治橋のたもとまでやってきた旅僧は、この橋に茶の湯や花が手向けられているのを見て、その謂れについて尋ねるべく、アイである所の者を呼び止めます。
 所の者は、ここに通円という茶坊主がかつて居り、宇治橋供養の際に茶の点て死にをしたものであるので、供養して通ってもらいたい旨述べます。旅僧は脇座で待謡を謡いますが、これが既に《頼政》の待謡のパロディになっています。《頼政》では「思ひ寄るべの波まくら」と謡いだしますが、ここでは「思ひ寄るべの茶屋の内」と謡います。
 ここで通円が現れ、団扇を持って舞いますが、ここからの謡は徹底的に《頼政》をもじります。赤字は《通圓》、その下の黒字丸括弧が《頼政》です。以下同じです。
「大場点て飲まし、客人胸に沁む
(紅波盾を流し、白刃骨を砕く
「世を宇治川の水汲みて、アラ昆布恋しや。
(世を宇治川の網代の波、あら閻浮恋しや。
「お茶方のあはれはかなき湯の中に、
(うたかたのあはれはかなき世の中に、
「鑵子の蔓の熱きにも、煮ゆる茶の湯は面白や。
(蝸牛の角の争ひも、はかなかりける心かな。
 驚き、そして名を問う旅僧に対し、自分は「茶を点て死にせし、通円と言ひし茶屋坊主なり」と答えます。能形式に「最期の有様語り給へ、跡を弔うて参らせん」と伝える僧に対し、通円は柄杓と茶筅を持ちながら舞い、そして最期の様子を語ります。宇治橋の供養も半ばとなった頃、都道者つまり巡礼がやってきて、通円の茶を飲んでしまおうとやってきた、と述べ、以下は再度《頼政》をトレースしてもじります。
「名乗りもあへず三百人、口脇を広げ茶を飲まんと、
(名乗りもあへず三百余騎、銜(くつばみ)を揃へ川水に、
「群れゐる旅人に大茶を点てんと、茶杓をおっ取り簸屑共、ちゃっちゃっと打ち入れて、
(群れゐる群鳥の翼を並ぶる、羽音もかくやと白波に、ざつざつと打ち入れて、
「浮きぬ沈みぬ点てかけたり。
(浮きぬ沈みぬ渡したり。
通円は「一騎も残らず点てかけ点てかけ」、遂に力尽き、平等院の縁の下に、扇ならぬ団扇を敷いてそこで点て死にします。《頼政》では最期に「たち隠れ失せにけり」となるところ、「茶ち隠れ失せにけり」と謡われ、舞留めで終止します。

◆みどころ
 余りに字句に近づけてもじろうとし過ぎて意味が通らない部分も一部ありはするのですが、全体的に実に見事な換骨奪胎で、真面目にやるほどにおかしみがにじみ出る名曲です。

(2015.2.6 updated.)
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