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ノラス独奏チェロ、ラシライネン指揮ノルウェー放送管の録音。ノラスのチェロは叙情的でとても清潔である。ノルウェー放送管の伴奏は、北欧のオケらしく力強さは全くないが、繊細さと忍びやかな音色でノラスをサポートしている。皆ノーマークだが思いの外いい演奏。




Cello Concerto No.1 in Es-Dur op.107
  チェロ協奏曲第1番 変ホ長調 作品107

■作曲 1959年
■初演 1959.9.21(ピアノによる試演会) モスクワ作曲家同盟の家にて
       作曲者ドミトリー・ショスタコーヴィチ自身の編曲による
      1959.10.4(管弦楽版による初演) モスクワ音楽院大ホール
       ロストロポーヴィチ(vc)
       ムラヴィンスキー指揮レニングラード・フィルハーモニー交響楽団による
《楽器編成》
solo Cello
Fr. 2 Ob. 2 Cl. 2 Fg. 2, CtrFg.1
Hr. Tim.
1st Violin 2nd Violin Viola Cello C.bass
Celesta


■概要

 作曲家が、演奏者の歌心、超絶技巧、或いはその音楽性に惚れ込んでそのジャンルの作品を作るということはよくある。例えば有名どころではモーツァルトはクラリネット奏者アントン・シュタードラーの音色に打たれてクラリネット協奏曲および五重奏曲を書いているし、ブラームスは、クラリネット奏者リヒャルト・ミュールフェルトの演奏に触発されて、クラリネット三重奏曲、五重奏曲を書いている。

 ショスタコーヴィチは、チェロ協奏曲の創作欲は、プロコフィエフの《チェロのための交響的協奏曲》を初めて聴いた時に起きた、ということを語っている。この《交響的協奏曲》とは、1951年に作曲され、1952年2月に初演されたプロコフィエフのチェロ協奏曲第2番のことを指しており、どのタイミングで聴いたか分明ではないが、この曲を聴いて刺激を受けて作曲したのがプロコフィエフなら、そのプロコフィエフに作曲の霊感を与えたのがチェリスト、ムスティスラフ・ロストロポーヴィチである。そして完成したこのショスタコーヴィチ作曲のチェロ協奏曲もまた、ロストロポーヴィチに献呈された。

 作曲当時のショスタコーヴィチは、妻と母を相次いで亡くし、拙速に結婚したようにしか見えない若い女マルゲリータとの関係も余りうまくいっておらず、つまりは当時の環境が作曲に適しているとは言い難かったこともあるだろうが、いわゆるスランプ期に入っていた。交響曲第10番が完成したのが1953年秋だが、それから1954年に妻が死に、1956年に母が死に、その後このチェロ協奏曲までは目立った作品がでてきたとは言いがたい。
 そして、1959年の秋から冬にかけて、このチェロ協奏曲が完成し、またマルゲリータとも離婚が成立して、ようやく殻を破ったように曲ができはじめる。


■楽章

 第1楽章 アレグレット 変ホ長調 2分の2拍子。冒頭、G-F♭-C♭B♭とスキップするように奏される第1主題動機は、この後の楽章でも繰り返し出てくる基本動機である。ポリリズムで自由に展開されたあと、ティンパニがドンと鳴って新しい楽想が出る。舞曲伴奏のような断片を奏するオーケストラの上に熱を帯びた独奏チェロが第2主題を奏する。後半に至るとホルンが活用され、第1主題、および独奏チェロの相手をするように第2主題を奏する。ティンパニは第2主題の手前、またはコーダの最後など、音楽の風景が変容するところに効果的に、また半ば単純に一撃を加える。
 第2楽章 モデラート イ短調 4分の3拍子。自由な3部形式。ショスタコーヴィチの緩徐楽章らしく、弦合奏は抒情豊かで暗く、美しい。ホルンが鳴ったすぐのちに、チェロが情緒的な主題を奏する。のち主題はクラリネットに手渡されるが、抒情豊かなクラリネットはチャイコフスキーを彷彿とさせる。弦で主題が再生されたのち、エスプレッシーヴォでチェロに新しい主題が出ると中間部である。音楽は次第に盛り上がり、第1楽章と同じくティンパニの一撃で導入部に戻るが、ハーモニックスのチェロとチェレスタの対話であり、静謐で不可思議な雰囲気である。宇宙映画の伴奏にも聞こえる。
 第3楽章 カデンツァ 4分の4拍子。チェロ独奏。第2楽章中間部の動機が鳴り、続いて第2楽章で展開に用いた動機の部分が次々に現れる。時折第1楽章の基本主題も情熱的に聴かれる。無伴奏チェロ組曲のようである。
 第4楽章 アレグロ 4分の2拍子。ロンド・ソナタ。搖動しながら半音下降する主要主題がオーボエとクラリネットに出る。すぐチェロが模倣する。やはりティンパニのソロが切り替えに入る。木管が悲鳴のようにグリッサンドするとチェロが強烈で急速な副主題を奏する。主要主題が再現され、突然3拍子になって第1楽章基本動機などが顔を見せる。ロンド形式らしく主要主題は何度でも帰ってくるが、その合間に第1楽章の基本動機が何度も登場してくる。最後も基本動機が木管フォルティッシモで鳴らされるなか、例に漏れずティンパニが連打を行って楽章を終える。

■蛇足

 1959年の作品だけあって技術的には実に鮮やかな、ショスタコーヴィチらしい名曲。いつもながらではあるが、ソナタ形式を含めた音楽ジャーゴンの枠に収まりきらない、実に自由な作風である。

(up: 2015.1.15)
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