コンテンツ > 音楽 > 作曲家 > ショスタコーヴィチ > 作品リスト > 映画音楽《愚かな子ネズミの物語》 | ||||||||||||||||||||||||||
シャイー/フィラデルフィア管弦楽団の演奏。ショスタコーヴィチの一面である映画音楽に絞った選曲である。収録された《愚かな子ネズミの物語》はコーナル編曲版で、このRECのために準備された、としている。このCDは、そのコーナル自身が解説書筆者を務めている。 |
The Tale of the Little Silly Mouse op.56 映画音楽《愚かな子ネズミの物語》 作品56 ■作曲 1939年 ■初演 不明 - スコア散逸としている アンドルー・コーナル編曲版初演は1998年5月 シャイー指揮フィラデルフィア管弦楽団による |
|||||||||||||||||||||||||
《楽器編成》
|
||||||||||||||||||||||||||
■概要 この音楽は、アニメ映画《愚かな子ネズミの物語》にショスタコーヴィチが音楽をつけたものである。 元々の原作は児童文学者サムイル・マルシャーク (1887-1964) によるもので、その物語はこうである。 なかなか眠ろうとしない子ネズミ、お母さんはあの手この手で眠らそうとする。まず子守唄を歌ってみるが眠らない。続いて近くに住むいろいろな動物に頼み、それぞれの子守唄を歌ってもらう。しかし誰が尽力してみても、赤ちゃんネズミは眠らず、あまつさえそれらの努力に対し下品な言葉を投げかけさえする。 八方手を尽くすなかでネコにもその依頼がくるが、ネコはしばらくネズミを食っていないことを思い出して喜んで合意し、子守唄を歌う。愚かにも眠ってしまう子ネズミ。静かになって朝が来る。お母さんネズミは赤ちゃんの眠っているベッドへやってくるが、ベッドはもぬけの殻、中庭の別の場所でネコは相変わらず子守唄を繰り返しながら子ネズミを食う準備をしている。イヌ(老犬)がタダ事やらんことに気付き、ネコに突撃を敢行、小競り合いののちネコは退散する。お母さんネズミは再度子守唄を歌い、今度は子ネズミはお母さんの声の下、眠りにつく。 オリジナルでは、楽器とヴォーカル・ラインで構成されているとのことだが、アンドルー・コーナル編曲版はショスタコーヴィチの楽器振分けを生かしつつ、純器楽曲として再構成されている。振分けは以下のとおり。
■楽章 ※単楽章編成である ハ長調。恐らくアレグレット、4分の2拍子。フルートがなだらかな主旋律を奏で、「眠りなさい」と切分音を与えながらオーボエとやりとりをするが、トリルのついたオーボエ(子ネズミ)ににべもなく拒絶される。ハ長調の分散和音で、童謡のような語りかける旋律がフルートに出る。子守唄を歌っている母。一生懸命である。ヴァイオリンの落ちていく旋律は母親の困った心情だろう。曲想が変わりアレグロの3拍子となり、母親は近所の動物たちに助けを求めに行く。アテンポでさきほどの子守唄と同じ旋律がトランペットに出る。ガチョウが任についたわけだが、しかし赤ちゃんネズミにまたも拒絶される。弦合奏で落ちていく旋律。母さんはがっかりだ。また母親は別の助けを呼びに行く。弾んだリズムで、先ほどより急いでいる。大太鼓も混じって大騒ぎ、今度はブタが駆り出された。ブタはファゴットでヘ長調、同じ子守唄の旋律を出す。拒絶する子ネズミ。母さんがっかり。今度はヒキガエルに頼みにいく。コントラバスだ。今度は眠りそうな旋律だが、オーボエは一瞬眠りそうな素振りも見せるが、やはりだめ。ウマがやってきておんなじことをするが、やはり通用しない。ネコが頼まれた。喜ぶネコ。ネコがそれこそあべこべに猫なで声で子守唄を歌い始めると赤ちゃんネズミ、眠り始める。ヴァイオリンだものいい声だ。お母さん一安心。シロフォンが明滅して幸せな眠りにつき始めたことを示す。子守唄の部分展開で、ネコの心の声が示される。フッフッフ、てなもんである。しかし老犬が様子がおかしいことに気づく、いきなり曲想が激しくなり、イヌとネコの小競り合いが始まる。大太鼓の一撃でネコ退散、再度子守唄がヴァイオリンで、次にフルートで出る。命拾いの赤ちゃんネズミ、何が起ころうとしていたのかも知らず、眠り始める。シロフォンがあとを引くように曲を終える。 ■付記 実にかわいらしい佳曲で、13分あまりの小曲であるが、変化があって飽きさせない。 (up: 2015.1.22) |
||||||||||||||||||||||||||
> 作品リストへ戻る | ||||||||||||||||||||||||||
> 作曲家一覧へ戻る | ||||||||||||||||||||||||||
|