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takoさんの若き頃の才能の煌めきを、シャイー/フィラデルフィア管が純音楽的に、余すところなく音化する。ロシア的、或いはソ連音楽的なアクはないが、これは明らかに、ひとつの名演の記録である。




The Bolt op.27a
  バレエ組曲《ボルト》 作品27a

■作曲 1930-31年(バレエ曲)、1931年(組曲版)
■初演 1933.1.17 レニングラード フィルハーモニー大ホール
  ガウク指揮 レニングラード・フィルハーモニー交響楽団による(組曲版)
《楽器編成》
Picc., Fr. 2 Ob. 2 E.Hr.,KCl. Cl. 2 Fg. 2, CtrFg.1
Hr. 6 Tromp. 3 Tromb. 3 Tuba Tim.
1st Violin 16 2nd Violin 14 Viola 12 Cello 12 C.bass 10
Symbal Tamb. Tamtam Triangle Xylophon
Glockenspiel Bass drum Side drum


■概要

 まだ20代、新進気鋭の作曲家であったショスタコーヴィチは、その青年期のエナジーを爆発させるかのようにしていろんなジャンルに曲を書いた。このバレエ音楽《ボルト》が書かれたのがショスタコーヴィチ25歳の年だが、この前後にはまさに劇音楽系の仕事が山積している。1927年に書かれた、作品番号14番をもつ交響曲第2番から、ひとくぎりの《マクベス夫人》までの作品を並べてみると、こうなる。

 op.14 交響曲第2番 ロ長調
 op.15 歌劇《鼻》
 op.16 タヒチ・トロット(V・ユーマンス「二人でお茶を」編曲版)
 op.17 D.スカルラッティの2つの小品
 op.18 映画音楽《新バビロン》
 op.19 劇音楽《なんきん虫》
 op.20 交響曲第3番
 op.21 日本の詩による6つのロマンス
 op.22 バレエ《黄金時代》
 op.23 ドレッセルの歌劇《コロンブス》のための2つの小品
 op.24 劇音楽《射撃》
 op.25 劇音楽《処女地》
 op.26 映画音楽《ひとり》
 op.27 バレエ《ボルト》
 op.28 劇音楽《ルール・ブリタニア!》
 op.29 歌劇《ムツェンスク郡のマクベス夫人》

 劇音楽と映画音楽に没頭していたことが伺える。

 この劇音楽系統の作品のなかで、いまでも時々演奏されるものを挙げれば、《マクベス夫人》はいわずもがなだが、あとは歌劇《鼻》、タヒチ・トロット、バレエ《黄金時代》の組曲版、そしてバレエ組曲《ボルト》ということになるだろう。しかし不幸なことに、青年ショスタコーヴィチ気鋭のモダニズムは、当時のプロレタリア文化政策と折り合いがあわず、教条主義的批判に振り回されることになる。たとえば歌劇《鼻》は、興行的には失敗ではなかったものの、その斬新な音楽語法がプロレタリア派の猛攻撃に遭い、結局十回ほど公演にかけられたのち引っ込められ、長い間(1974年まで)お蔵入りとなった。つづくバレエ《黄金時代》は演出家が音楽を理解できずにちぐはぐの公演を笑われ、次に作曲されたバレエ《ボルト》はさらにその上をゆく不評であった。尤も《ボルト》についていえば、興行的失敗とプロレタリア的非難を考慮したショスタコーヴィチが、旋律の単純化をめざしたところに台本が陳腐な教条主義的内容であったがゆえに、毒を抜いて旨みがなくなってしまったという結果に至ったともいえよう。難解さや前衛性を多少まろめて、あるいは一部、前作の旋律を流用して作られたボルトの音楽は、ショスタコーヴィチの劇音楽・バレエ音楽のなかでも親しみやすい。いまとなってはそれは長所のひとつである。

 さて、バレエ《ボルト》のあらすじは次のようだ。舞台は革命後のソヴィエト。労働者レーニカ・グーリパは工場を解雇される。大酒飲みで怠惰なグーリパは、社会主義国家にとって有害であるからである。革命後の労働者社会では怠けることができると思っていたグーリパは、工場の機械にボルトを混入して壊してやろうと、労働者ゴーシャをそそのかす。しかしゴーシャは労働者の使命に則り、管理者にそれを報告して、グーリパは捕らえられる。

■楽章

 第1曲 序曲 トランペットによる起床ラッパのような音型で始まる序奏主題と、快速の主部による。ヴァイオリンの奏するアレグロ主題は、まるでウェーバーの《魔弾の射手》序曲のような、初期ロマン主義的な表情をもっている。
 第2曲 官僚の踊り ぴょこぴょこと跳ねるような、どこか間抜けなピッコロの奏する主題と、グリッサンドで奏されるトロンボーンの掛け合いが面白い。クラリネットに別主題が出たのち、にわかに盛り上がって、再び冒頭主題がやや変形されて、ピッコロに出て、追い掛け合いをするように終わる。
 第3曲 御者の踊り トロンボーンのグリッサンドに続いて、田舎者めいた四角四面な主題がヴァイオリンに出る。主題部が二度繰り返されて終わる。
 第4曲 タンゴ(コゼルコフの踊り) エスプレッシーヴォでヴァイオリンに出る、喜歌劇「こうもり」のロザリンデ泣きの主題のようなアンダンテ主題、フォックストロットのようなトランペット主体のダンス主題、木管とトランペットによる小刻みな主題によって成り立っている。木管主題は厚みを増して繰り返され、華やかに終わる。
 第5曲 間奏曲 三部形式的にできていて、トランペット主体の、クシスケ作曲の小品のような主部と、レガート気味に奏されるヴァイオリン合奏の中間部とでできている。トランペット主題が再帰し繰り返されて終わる。
 第6曲 植民地の女奴隷の踊り 低弦にゆるやかな旋律が現れ、オーボエに民俗音楽的旋律が登場して、ゆるやかに舞う。小刻みなダンスのような、弦合奏による短い中間部を挟み、再び最初の旋律が現れて終わる。
 第7曲 イエスマン シロフォンに滑稽な主題が出る。低弦やファゴットなどの合いの手を挟みながら、主題はふらふらと進んでゆく。やがて金管を伴った行進曲のような重々しい旋律と、シロフォンが掛け合いを行う。ざくっと終わる。
 第8曲 全員の踊りと大詰め プレスト。最初は2分音符中心で、ホルンによる非常に大らかな主題によって始まる。のち裏打ちをする弦合奏に支えられて、フレンチ・カンカンのような騒がしい曲想に至る。

■蛇足

 わたしは田舎者のせいか、第3曲の「御者の踊り」が大好きである。ここにはほとんどパラノイア的な重々しさがある。

(up: 2008.2.22)
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