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▽ Igor Stravinsky
■作曲 1909〜13年 ■初演 1914.5.26 パリ・オペラ座 ピエール・モントゥー指揮による ■台本 ステファン・ミトゥーソフとストラヴィンスキー自身による (原作:アンデルセン「新童話集」) ■言語 ロシア語 ■時代 不明。唐の時代? ■場所 中国・宮廷 |
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《楽器編成》
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■概要 この作品は1909年に書かれ始めたが、同年に着手されたものとして、彼の代表作のひとつでもあるバレエ《火の鳥》がある。元々は《ナイチンゲール》の手付けが先だったが、ロシア・バレエ団総帥である高名なディアギレフに依頼されたバレエ音楽が1910年、《火の鳥》となって結実し、彼の名を高からしめたという経緯がある。バレエ作品の制作・完成に注力し始めた彼はそれぞれ1910年、1911年に着手された《ペトルーシュカ》《春の祭典》を11年、13年に相次いで完成、一大センセーショナルを巻き起こすが、そのぶん《ナイチンゲール》は完成が大幅に遅れることになる。 モスクワ自由劇場との《ナイチンゲール》委嘱契約は結局13年に破棄され、当該作品は上記のように、パリ・オペラ座において1914年、かの《春の祭典》初演も手がけたモントゥーの指揮によって初演された。 ほぼ同時期の作品《火の鳥》《春の祭典》《ペトルーシュカ》という彼のいわゆる「三大バレエ音楽」と比較すると知名度は大きく落ちるが、ストラヴィンスキーらしい節回しはそこここに聴かれる。例として、一般的な「序曲」にあたる「導入部」は、彼の《春の祭典》第二部「いけにえ」の導入部を彷彿とさせる。また、決して厚くはないが、師・リムスキー=コルサコフ譲りで満遍なく伸びるオーケストレーション、ペンタトニック的な美しい旋律、明快な筋などと相俟って、聴かせるオペラである。 以下にあらすじを記載するが、第2幕で、日本から、機械仕掛けのナイチンゲールを持参した遣使がやってくる場面がある。それを考慮すると時代背景は唐の時代かあるいは明の時代だろうか。 ■内容 第1幕 森の外れ、水辺に漁夫を乗せた舟が一艘。漁夫がナイチンゲールの賛歌を歌う。「あの歌声を聞いていると、網のことも心配事もすべて忘れてしまう」。ナイチンゲールが歌い始める。漁夫だけではない、森の人々はこの声を待ちわびているのだ。 森に、料理番の娘、城の廷臣たちが現れ、皇帝の命でナイチンゲールを捜し求める。廷臣たちは森に聞かれる動物の鳴き声にいちいち反応し、それをナイチンゲールの声として賞賛するが、料理番の娘に「ナイチンゲールの声ではない」と否定される。じきナイチンゲールの声を聞き分けた料理番の娘はナイチンゲールに語りかけ、宮廷に来て皇帝に声を聞かせてくれるよう頼み込む。ナイチンゲールは同意し、彼らは同道して宮城へ帰る。漁夫のナイチンゲール賛歌が響く中、第1幕が終わる。 第2幕 ナイチンゲールを迎える準備をしている一同。よろこび勇んで、宮城へ行進をする。もちろん料理番の娘も見られる。 やがて陶器造りの中国宮廷、宴会の準備が既に整っている。皇帝が登場し、ナイチンゲールはその御前で歌い始める。ナイチンゲールの歌声を聴いた皇帝は涙を浮かべ、廷臣、内大臣は賞賛を惜しまない。そこに日本から遣使がやってくる。機械仕掛けのナイチンゲールを献上したい、という口上である。機械のナイチンゲールが歌っている間に、本物のナイチンゲールは飛び去ってしまう。皇帝は怒り、ナイチンゲールを領土から追放する。いっぽう(当然ながら逃げない)機械ナイチンゲールを宮廷第一歌手に取り立て、皇帝は退場する。そんな中、漁夫の「清らかな鳥の声だけが死を追い払う」というナイチンゲール賛歌が響き、第2幕が終わる。 第3幕 宮廷の一室。皇帝は病に臥している。死神があらわれ、彼はすでに皇帝の冠を被り、皇帝の剣を手にしている。死神と幽霊の声におびえる皇帝は、まさしく死にものぐるいで「死を追い払う」音楽を所望する。ナイチンゲールがあらわれ、「宮廷の庭が如何に美しいか」歌うところだといって歌い始める。その美しい歌声に、皇帝はおろか死神までも聞き惚れ、歌い終わった鳥に「もっと歌ってくれるように」懇願する。皇帝の持ち物を返したら歌う、と述べるナイチンゲールを前に、死神は奪っていた冠、剣、旗を唯々諾々と返す。再びナイチンゲールは歌い始め、皇帝はすっかり元気を取り戻す。死神はやがて消えてしまう。「最高の栄誉」をとらせると述べる皇帝に対し、ナイチンゲールは、皇帝陛下の涙こそが最高の贈り物、と歌い、「毎晩暗くなったらここで歌う」ことを約束して飛び去る。 皇帝の死を覚悟しつつ行進を行う廷臣たち。その前に元気になった皇帝が姿を現す。漁夫の声が、鳥の歌に対する賛歌を歌う中、幕が下りる。 ■付記 一時間に満たないオペラで、知名度も低いわりに準備に手間がかかる作品だけに、恐らくプログラム化が難しいのだろう、なかなか上演の機会がないが、たびたび現れる異国風の旋法は興味深く、また第1幕のナイチンゲールのアリアに見るように、はっとする美しい旋律もそこここに現れる。「ストラヴィンスキー=原始的リズムあるいは新古典主義」という先入見に少し風穴をあける作品である。 (up: 2009.1.30) |
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