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シノーポリ指揮フィルハーモニア管弦楽団の1985年セッション録音。カレーラスのアルヴァーロ、アグネス・バルツァのプレツィオシルラははまり役。カレーラスは往年のパワフルさはないが、しかし雰囲気は十分。でもプロウライトのレオノーラはどうだ。悪くはないが…レオノーラはもっと強靭でないといかんようにも思われる。


セラフィン指揮スカラ座管弦楽団による1954年の演奏。モノラル。マリア・カラスのレオノーラを聴くための一枚。強靭である。ドン・アルヴァーロ役はタッカーが務めている。
 ▽ Giuseppe Verdi
La Forza Del Destino
歌劇《運命の力》



■作曲 1862年作曲 - 1869年改訂(ミラノ・スカラ座初演に際して)
■初演 1862.11.10 ペテルブルグ 帝室歌劇場
■台本 フランチェスコ・マリア・ピアーヴェによる
■言語 イタリア語
■時代 1740年頃
■場所 スペイン セヴィリアとオルナチウェロス村
      イタリア ローマ近郊ヴェルレトリ

《楽器編成》
Fr. 3 Ob. 2 Cl. 2, BassCl. Fg. 2
Hr. 4 Tromp. 2 Tromb. 3 Tuba Tim. 4
1st Violin 16 2nd Violin 16 Viola 12 Cello 12 C.bass 8
Side Drum Bass Drum Banda Harp 2


《おもな登場人物》
カラトラーヴァ侯爵 (バス) カトリックのヴァルガス家当主。のち駆け落ちがからんだ事故で死ぬ。
レオノーラ (ソプラノ) アルヴァーロの恋人。駆け落ちを予定していたが予定が狂う。のち生きる場所を求めて修道院へ。
ドン・カルロ (バリトン) 侯爵の息子。レオノーラの兄。闘志あふれる男。
ドン・アルヴァーロ (テノール) インカ王族の血を引く。レオノーラの恋人。のちラファエレ神父となり「天使の聖母」修道院に入る。
プレツィオシルラ (メッゾ・ソプラノ) ジプシーの占い師。20歳くらい。魅力的で村で人気がある。
グアルディアーノ (バス) フランシスコ派「天使の聖母」修道院神父。かなり院で偉い。
フラ・メリトーネ (バリトン) 修道院の修道士。太っちょで陽気。割に短気でもある。
クーラ (メッゾ・ソプラノ) レオノーラの侍女。駆け落ちの手伝いをする。設定では旅に憧れているらしい。



■概要

 この作品までにヴェルディが作曲したオペラは21曲。既にヴェルディのオペラ作曲家としての名声は天高く、イタリア以外の全ヨーロッパに響きわたっていた。
 それまではほとんどはイタリア、あとはロンドン、そしてパリの歌劇場のために作曲していたヴェルディだが、1861年、ペテルブルグの帝室歌劇場からオペラの委嘱を受ける。依頼は好条件、ヴェルディはその仕事を受け、結果的に莫大な報酬を得た。ただしその初演および何度かの再演は大成功とは至らなかったらしい。
 1869年2月27日のミラノ・スカラ座初演に先立って、ヴェルディはこの作品を大幅に改訂、現在の形になる序曲をつけたほか、元々ドン・アルヴァーロが絶望の余り崖から身を投げて死ぬ(ということは元々の筋では重要人物は3人共死ぬことになる)、となっていた台本を現行の形、つまりドン・カルロとレオノーラは死んでアルヴァーロは残される、という形に改訂している。
 スカラ座初演は果たして大成功となり、結果的にはこの形が《運命の力》として後世に残ることになった。

■内容

 序曲
 しばしば単独でも奏される名曲。
 そもそも1862年のオリジナルでは《リゴレット》のような短い前奏曲だったようだが、1869年の改訂にて大規模な序曲がつけられた。この序曲に出る旋律の多くは劇中で重要な動機として使われるものであり、典型的な接続曲風の序曲となっている。
 ホ短調。冒頭序奏は4分の2拍子。金管とファゴットで主和音が3つ、鳴らされる。「運命の力動機」である。曲中何度も出てくる。続いて主旋律、8分の3拍子。運命リズム「タタタタン」で構成されている。「運命リズム動機」である。緊迫した旋律であり、こちらも曲中、レオノーラと絡めて何度も現れる。続いて「運命の力動機」が再現された後にイ短調、アンダンティーノで木管に出る旋律は、「キリスト教的寛容の動機」もしくは「寛容の動機」であり、第4幕の重要場面で再現する。続いてト長調のアンダンテ・モッソ、4分の4拍子、ヴァイオリンの上行音型で緩やかに奏される旋律は、第2幕、レオノーラのアリアに登場する旋律であり、救いを求める動機でもある。続いてホ長調、アレグロ・ブリランテでクラリネットに光が差し込むような旋律が現れる。ハープがアルペジオで下支えしており、天国的である。これはレオノーラとグアルディアーノ神父との二重唱にて援用される。さらに接続的に激しい展開をしたのち、ト長調で金管にコラール風の旋律が出る。やはり第2幕のレオノーラとグアルディアーノ神父との二重唱にて出る旋律である。この後、再度接続的に展開したのち、ダイナミックなコーダを形成する。

 第1幕
 カラトラーヴァ侯爵邸内。
 父である侯爵が、娘レオノーラに就寝の挨拶をしている。レオノーラは様子がおかしい。実は彼女はドン・アルヴァーロとの駆け落ちを決心している。ドン・アルヴァーロと彼女は密かな恋人同士。しかしレオノーラはカソリックの名家ヴァルガス家の娘。当主で父のカラトラーヴァ侯爵が許すはずもない。レオノーラは父に話し出せない。父親が寝室から去ったのち、侍女クーラとともに駆け落ちの準備をするレオノーラ。3拍子のロマンツァ、ヘ短調で苦悩に満ちたレオノーラの心情が歌われる。愛するアルヴァーロについていきたいが、目指すのは異国の地、愛する父親はじめ自分のすべてを捨てて行かなければならない。そこに馬蹄の音。アルヴァーロが彼女を迎えに来たのである。アルヴァーロの息せき切った変ホ長調旋律から始まる二重唱。最初こそ「やはり明日にしましょう」というレオノーラだが、やがて決心が決まり、声が重ね合わされる。いざ出発というところで侯爵登場。「運命リズムの動機」がフォルティシモ、嬰ハ短調で出る。そしてこの動機に引っ張られるようにしてこの場面全体の音楽が構成されている。侯爵は怒り狂っている。当然である。アルヴァーロは拳銃を出すが、しかし侯爵に抵抗するつもりがないことを示すためそれを投げ捨てる。地面にあたって暴発する拳銃。銃から放たれた弾丸は侯爵を貫いた。駆け寄るレオノーラ。娘に呪いの言葉を投げかけるカラトラーヴァ侯爵。気を失うレオノーラ。そのレオノーラを抱きかかえ、アルヴァーロは姿を消す。

 第2幕
 第1場 南スペイン、オルナチウェロス村。
 大きなレストランである。食事客が幾人か座り、店員が慌ただしく動いているなかに、男装したレオノーラ。冒頭から運命ファンファーレ動機がイ短調で鳴るが、すぐにスペイン民俗舞曲風になり、村人たちの踊りが始まる。やがて食事の準備ができ、村人たちが席につく。座っていた客の中に、兄ドン・カルロがいることにレオノーラが気づく。そこへ村の人気者で占い師でもあるジプシー、プレツィオシルラが「戦争はすばらしい」と歌いながらやってくる。イタリアでドイツとの戦が始まっていること、イタリアを救うため従軍することを勧める。ドン・カルロは内心、娘とドン・アルヴァーロを探しているのだが、村人に身の上を尋ねられ、父親の悲劇を友人の話と偽り、イ長調のバッラータでそれらを歌う。プレツィオシルラだけは「ああ、それもいいが、私は騙せないね」と皮肉をいって去る。第1場での民俗舞曲風の旋律、プレツィオシルラの歌った旋律などが再現され、第1場は閉じられる。
 第2場 オルナチウェロス村から離れた岩山の中。
 「天使の聖母」修道院前。レオノーラが疲労困憊の様子でここにたどり着く。アルヴァーロはあの夜以来行方不明。そして世間に顔向けが出来ぬレオノーラはこの修道院でひっそり生きるしかないと決心し、ここを訪れたのだった。冒頭、「運命リズム動機」が現れ、レオノーラがソロでアリアを歌う。ロ短調という最も息苦しく重々しい調性で歌われるこのアリアは、あの運命の夜、一瞬にして全てを失ったレオノーラの心情を語って余りある。やがてロ長調に転調し、救いを求める旋律となる。
 レオノーラは修道院に呼び入れられ、グアルディアーノ神父と対話をする。彼女がヴァルガス家のレオノーラだと知り驚く神父。ここで神に身を捧げたいと言うレオノーラ。落ち着いた口調で「一時の感情に惑わされている方にはおすすめできない」と断る神父。しかし、激情的なレオノーラと優しく荘厳な神父、という二人の対照的な性格をもつ二重唱のなかで、レオノーラの決心が堅いことを知ると、修道院の岩山の洞窟にある庵に住まうことを許す。そして修道士を呼び出し、僧衣を身にまとったレオノーラに祝福を与え、同時に全員に対し、洞窟に近づくものには災いがあろうと告げる。このフィナーレはオルガンの嬰ヘ長調の前奏で始まり、冒頭は神父と修道士にて歌われるが、やがてレオノーラも加わった合唱はト長調アダージョの清らかで敬虔なアンサンブルで閉じられる。

 第3幕
 第1場 北イタリアはヴェッレートリ近く、イタリア軍の陣営。
 アルヴァーロがレオノーラを想い、苦しい胸の内をアリアにて歌う。近くで騒ぎがあり、何事かと寄っていったアルヴァーロに、ドン・カルロと数人が剣を抜いて切り結んでいる。とはいえドン・カルロは「助けてくれ!」と懇願している。割って入ったアルヴァーロ。ドン・カルロは命拾いする。賭けの揉め事で殺し屋が出てきて殺されかけたのだ、と告白する。二人は互いに運命の相手とは思わず、偽名を名乗りあい、友情を結ぶ。
 第2場 激戦の最前線。
 双方激しく切り結ぶが、やがて銃傷を負って運ばれてくるドン・アルヴァーロ。心配そうに駆け寄る友人ドン・カルロ。このまま死なせてほしいというアルヴァーロ。必ず助けると伝えるドン・カルロ。続けて「カラトラーヴァ勲章があなたに贈られます」と伝えるドン・カルロ。当然アルヴァーロは「それはいけない!」と激しく拒絶する。疑念を抱くドン・カルロ。彼は何者だろうか?そして今わの際にアルヴァーロ、封筒を「わたしの秘密が入っているので、わたしが死んだら焼いてほしい」とドン・カルロに託す。胸を詰まらせて承諾するドン・カルロ。しかしアルヴァーロが寝室に運ばれたのち、疑念を抱かざるをえないドン・カルロ。彼はもしかして、妹の誘惑者ではないのか?封筒を見たい衝動にかられる。やがて彼は封筒を開いてしまう。レオノーラの肖像!彼が宿敵であることに確信を持つドン・カルロ。ホ長調で始まるこのドン・カルロのアリアは、途中、シェーナで入る軍医の「アルヴァーロが命を取り留めた」という報告から爆発的なカヴァレッタ(やはり奴はドン・アルヴァーロだ!命を取り留めたのは幸い、わたしが殺してやる、という感情が歌われる)へ移行する。
 第3場 ヴェッレートリ近くの野営地。
 夜中である。ドン・アルヴァーロが物思いに耽りつつ現れる。ドン・カルロ登場。自分の本名を名乗り、アルヴァーロに決闘を申し込む。死ぬのは何でもないが友情をかけてくれた人間に刃を向けるのは忍びないと伝えるアルヴァーロ。そのような感傷を歯牙にもかけぬドン・カルロ。更にアルヴァーロ、死んでいると思っていたレオノーラが、ドン・カルロの話で生きていることを知る。一緒に探しましょう、とアルヴァーロはレオノーラとの結婚を夢見るが、ドン・カルロは「妹も殺す」と取り付く島もない。アルヴァーロとドン・カルロの二重唱は激烈な音楽となり、決闘が始まるが、やがて巡邏に止められてしまう。落胆ひとかたでないアルヴァーロ。修道士となることを決心し、心の平安を求める。
 やがて朝となり、商人があらわれ、活気溢れる音楽となる。「安物売の登場」という行商人トラブーコのアリエッタ、新兵たちの合唱とタランテラ、従軍僧としてやってきている修道士メリトーネの説教。最後はプレツィオシルラのハ長調ラタプランで華麗に幕を閉じる。

 第4幕
 第1場 「天使の聖母」僧院内部。
 第3幕の時代からは5年が経過している。物乞いたちが修道院に集まってくる。彼らによって歌われる混声合唱の「物乞いの歌」。冒頭こそ敬虔な響きだが、すぐに騒がしくなり、メリトーネの喜劇風ソロに接続する。メリトーネは鍋をもってきて物乞いに施しの食事を与えてまわるが、要求ばかりかまびすしい物乞いを蔑んで不平ばかり歌う。その中でラファエレ神父の話が出る。彼ら物乞いは数年前からこの修道院に入ったラファエレ神父を聖人のごとく言う。メリトーネはすねて鍋を投げて出て行ってしまう。やがてグアルディアーノ神父があらわれ、メリトーネをたしなめるが、話はそのラファエレ神父のことへ。そこへ修道院の呼び鈴が鳴り、ドン・カルロ登場。メリトーネに対し、尊大な態度でラファエレ神父と会いたいと伝える。
 ラファエレ神父登場。彼こそドン・アルヴァーロであり、ドン・カルロは野営地での決闘以来5年間彼アルヴァーロをさがしまわり、遂にこの修道院に見つけたことを歌う。2本の剣を差し出し、決闘を行わんとするドン・カルロ。アルヴァーロは、いまは神に仕える身、決闘はするつもりはないということを滔々と述べ、かしずいて慈悲の心を求める。序曲に現れた「慈悲の動機」がアルヴァーロの歌に何度も出る。妹を汚し、恥辱と不名誉を与えた卑劣漢を許さぬと拒絶するドン・カルロ。神の名にかけて彼女を汚していないと誓うアルヴァーロ。しかしドン・カルロはアルヴァーロを挑発し続ける。挑発に乗りかけるアルヴァーロだが、「慈悲の動機」が再度出て、一度はどうにか思いとどまる。さらに彼を挑発し、平手打ちを与えるドン・カルロ。怒るアルヴァーロ。音楽はイ短調のプレストとなって激しい悲劇性を高める。互いが「相手に死を与える」と叫び、二人で走り去る。
 第2場 修道院近くの庵。
 夕暮れである。やつれて顔の青いレオノーラが庵から現れる。音楽は「運命リズムの動機」から始まるが、すぐにレオノーラのアリア、メロディーアがアンダンテ、変ロ短調で始まる。ここに来た時から自分の苦悩は続いているが、今でもアルヴァーロを愛している、すべては運命、と歌われるアリアは、幽玄で哀しくも実に美しい。彼女はグアルディアーノ神父が届けてくれる糧を取りに行こうとするが、誰かが来る気配を感じる。再度「運命リズム」の動機が緊張感を高める。
 近くでは決闘の剣を交わす音が聞こえる。アルヴァーロの剣を受けたドン・カルロ。最後の告白をしたい、と告げる。アルヴァーロは、自分は呪われているので、と一瞬逡巡し、この近くに行者がいたことを思い出す。アルヴァーロは庵に走り来て「この男を見とってやってください」と嘆願する。拒絶するレオノーラ。懇願するアルヴァーロ。やがて声を聞いて、お互いがアルヴァーロとレオノーラであると気づく。レオノーラは呆然としながら彼に近づくが、アルヴァーロは逡巡し、「あなたの兄を殺した」と告白する。レオノーラ、森のなかへドン・カルロに向かって駆けて行く。突然の叫び声。レオノーラは今わの際にあった兄によって刺されたのだった。グアルディアーノ神父に抱きかかえられながら、「喜びのうちにあなたに先立ってまいります」とアルヴァーロに伝えるレオノーラ。敬虔で清らかなレオノーラと荘重なグアルディアーノ、そして哀しみに打ちひしがれるアルヴァーロの三重唱となる(劇性高い変イ短調から清らかな変イ長調へ転調する)。最後はピアニッシモで消え去るように終わる。


■付記

 やはり見どころは第2幕第2場、および第4幕第2場にて歌われるレオノーラのアリア。しかも第4幕第2場のアリアはヴェルディのオペラ始まって以来初めて「メロディーア」と称され、実に美しくメロディックであり、そして哀しい。そしてその意味では、レオノーラと、そしてアルヴァーロに強烈な力をもっている歌手を揃えないと凡演になってしまう大変難しい曲でもある。

(up: 2015.1.29 )
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