【DVD】
ドイツ語による、フェルゼンシュタイン演出の映像作品。演奏は△。主役ノッカーは◎。脇役は×。総合的には甘めに見積もって星3つだが、全曲集CDもDVDもほとんどない現状、これで我慢するしかない。Amazonレビュー書いています。
 ▽ Jack Offenbach
Barbe Bleue
喜歌劇《青ひげ》



■作曲 1865-6年
■初演 1866.2.5 テアトール・デ・ヴァリエテ
■台本 アンリ・メイヤック、リュドヴィク・アレヴィ
■言語 フランス語
■時代 中世
■場所 フランク王国(フランス一地方)?

《楽器編成》
Fr. 3 Ob. 2 E.Hr. Cl. 3 Fg. 3, CtrFg.1
Hr. 3 Tromp. 2 Tromb. 2 Tuba Tim.
1st Violin 2nd Violin Viola Cello C.bass
Symbal Tamb. Tamtam Triangle
Bass drum Side drum


《登場人物》
青ひげ (テノール) 青ひげ。領地を得ている公貴族。かなり気まぐれ。
ボベーシュ王 (テノール) 青ひげ領に隣接する地の王。偏執的で恐ろしく気まぐれ。
ブロッテ (メッゾ・ソプラノ) 牛飼い娘。羊飼いに横恋慕し追い掛け回している。とんでもない女丈夫。くじ引きで青ひげの6番目の妻となる。
ダフニス (テノール) 羊飼い。フローレットの恋人。のちにザフィーアの王子であることが判明する。
フローレット (ソプラノ) 羊飼いダフニスの恋人。その名の通り花売り娘だが、実はボベーシュ王の姫・ヘルミア王女であることが判明する。
ポポラーニ (バリトン) 青ひげに仕える錬金術師。嫁探しなども行う。
クレマンティーヌ (メッゾ・ソプラノ) ボベーシュの王妃。王と喧嘩ばかりしている。
オスカー伯爵 (テノール) ボベーシュ王国大臣。王にいいように翻弄されている。



■概要

 「青ひげ」の物語については、シャルル・ペローによる物語が有名である(周辺については、バルトーク「青ひげ公の城」の■概要を参照)。このオッフェンバックの作品は、「カルメン」の台本を担当したことでも名高いアンリ・メイヤックとリュドヴィク・アルヴィが手がけた台本によっており、やはり本来の筋とは随分違う。
 喜歌劇の王・オッフェンバックは当時既にパリで名声を得ており、喜劇である「天国と地獄(地獄のオルフェ)」「美しきエレーヌ」などを成功させていた。この作品も、1866年にパリにて初演にかかった後、同年9月には早くもドイツ語版がウィーンにて初演され、成功を収めている。1870年までにブダペスト、ロンドン、ニューヨークなどでも次々演奏がなされ、人気を呼んだ。
 ただ、オッフェンバックの人気は晩年落ち込み、それが全盛期の頃まで回復することはなかった。人気再興の兆しは時々見えるのだが、総じて不評を浴びてしぼんでしまうような状態で、現在にいたるも「ホフマン物語」「天国と地獄」以外はなかなか、上演はもちろん、録音さえ出ないのが現実である。

 音楽は全音階的で分かりやすい旋律が散りばめられ、まるでモーツァルトのジングシュピールから楽しい部分だけ抜き出して、砂糖をたっぷり掛けたようである(モーツァルトからの影響が非常に強いことは、一聴してよく分かる)。ただ、モーツァルトのオペラ楽曲は、しばしば脇役に愉快な旋律が奢られるに比して、このオッフェンバック「青ひげ」は、インパクトが強い愉悦の旋律はことごとく青ひげに与えられている(例えば第1幕の「最初の奥さんが死んだ理由は」、第2幕「青ひげのカンタービレ」など)。青ひげ、といえば誰に説明する必要もないキャラクターをもっているが、そのキャラクターにいい旋律を奢る。そのあたりの(些か単純な)楽曲構成も、わかりやすさをより強めているといえるだろう。

■内容

 第1幕
 青ひげ公の領内。田園風景である。羊飼いのダフニスが現れ、すぐに花売りフローレットが現れる。二人は恋人同士であると公言するが、堂々たる牛飼い娘・ブロッテが現れて、ダフニスを愛している、やりたい、と宣言する。
 錬金術師ポポラーニが青ひげの使いとして現れ、青ひげの6番目の妻さがしに現れたことを語る。ここで彼は、旧友のオスカー伯爵と出会う。はるか以前オスカーは、王と王妃の喧嘩が原因で川に流された王女を捜すために、この村に来たことがあるのだった。ポポラーニは村の女たちを集めて、くじびきにて「ミス薔薇」を決めると宣言する。数多集まった女の中に淫蕩で知られるブロッテがおり、村の女たちは非難するがブロッテはものともしない。くじが当たったのは他ならぬブロッテであった。おどろく周囲。喜ぶブロッテ。同席していたオスカー伯は、くじびきに使われていた籠が王家のものであると気づき、籠の持ち主を訊ねる。フローレットのものであることが分かり、フローレットはかつて流された王女ヘルミアであると知れる。
 退場するヘルミアをちら見した青ひげは、これを気に入り、王宮に乗り込み結婚を申し込もうと企むが、彼は既に妻を5人も取り替えている。ポポラーニが青ひげに、結婚相手にブロッテが選ばれたということを告げると、青ひげはブロッテに花冠を授け、「お前と結婚する」と告げる。村は大騒ぎ。結婚祝いの行進が王宮に向かう。
 第2幕
 臣下勢揃いのところにボベーシュ王が登場する。冒頭から頭が高いの低いのと無理難題をいう。なかでも、最近王妃と関係があると勘ぐっているアルバレスに不条理極まるいちゃもんをつけ、脇に控えるオスカー伯に対し、アルバレスを処刑するように命じる。オスカー伯は「これで5人目の犠牲者」と驚愕する。ボベーシュは「これで最後」と念を押す。ボベーシュは、青ひげが気に食わぬ、戦を仕掛けて占領してしまおうとオスカーにもちかけるが、大砲は既に「王の銅像をつくるために」溶かしてしまっており、既に戦う武器がないとたしなめられる。
 王妃がやってきて、ヘルミアの結婚が強引に決められており、娘にとって不幸であると王を叱責する。しかし政略結婚の相手として現れたザフィーア王子は、先の羊飼いダフニスであった。驚くヘルミアに、「君と結婚するために羊飼いになりすましていた」とザフィーア王子。そこへ青ひげがブロッテとともに登場、ブロッテはダフニスを見つけて大喜び、彼を追っかけ回す。青ひげはヘルミアに色目を使う。
 ブロッテとともに城に戻った青ひげは、彼女に先妻たちの墓を見せて、死を宣告する。地下室に引きずり込まれ、ポポラーニの作った「毒薬」を飲まされたブロッテは昏倒し、それを見て安心した青ひげは7番目の妻にヘルミアをもらうべく王宮へ向かう。しかしブロッテはポポラーニの電気ショックで生き返り、生き返った彼女にポポラーニは「青ひげに度重なる殺害を頼まれたが、実は誰も殺していない」と告げる。彼女たちはそれぞれの部屋に匿われており、めいめいが出てきて自己紹介をする。全員で青ひげへ復讐をしようと団結、青ひげ城を出発する。
 第3幕
 ボベーシュ王の宮廷、ヘルミアとザフィーア王子の結婚式が始まらんとしている。青ひげ闖入。またやもめになってしまった、と偽りの嘆きを見せる。ヘルミアに結婚の申し込みをするが当然断られ、「この城は包囲した」と射撃隊を見せて脅す。ザフィーア王子は「妻を守る」と決闘を申し込む。勝った方が王女を得られる。膂力に自信のある青ひげの望むところ、一同が物見遊山、囲んで囃すところで両者の決闘が始まる。驚くべき事にザフィーアは一撃、葬り去られる。青ひげが結婚のやり直しを望んでいるところに、ツィゴイネルの一団が現れる。それぞれボベーシュと青ひげを囲んで、人を殺したことを難詰する。驚き怒る両者。しかしそれぞれを囲んでいるツィゴイネルが仮面を外すと、それぞれが殺したことになっていた被害者だった。青ひげの妻たちはもちろん、ボベーシュの命で殺されたことになっていた人々は、オスカー伯が密かに匿っていたのだった。ヘルミアとザフィーアを含めた6組のカップルが出来、また青ひげはブロッテに改めて求婚、合計7組のカップルが「結婚式をあげましょう」と歌い、大団円となる。

■付記

 とんでもない予定調和。だが、それがいい。

(up: 2009.3.6)
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