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ショスタコーヴィチの弦楽四重奏曲に関してはボロディン四重奏団が大好きである。音はそんなによくないが、スラヴ的な力強さと生命力、強靭なアンサンブルは魅力。




String Quartet No.8 in C-moll op.110
  弦楽四重奏曲第8番 ハ短調 作品110

■作曲 1960年7月
■初演 1960.11.2 レニングラード グリンカ小ホール
  ベートーヴェン弦楽四重奏団による
《楽器編成》
Violin 2 Viola Cello


■概要

 作曲家の苦渋に満ちた、音楽による自伝ともいえるこの作品は、周囲の圧力に屈して彼が遂に共産党員になった頃に書かれた(当Web「ショスタコーヴィチ」第七部参照)。最後の交響曲第15番もそうだが、この曲も、かつての自身の曲主題が大量に用いられている。それぞれ、交響曲第1番、歌劇《カテリーナ・イズマイロヴァ》、ピアノ三重奏曲、交響曲第8番、交響曲第10番、チェロ協奏曲第1番の断片が、さらにはチャイコフスキーの交響曲第6番第1楽章第2主題、ワグナー「神々の黄昏」葬送行進曲、のエコーが聴かれる。
 彼は、Dmitri SchostakovichのinitialであるDSCH(ShostakovichではなくScho-となるのはドイツ語綴り)を、D-Es-C-Hと読み替え、二→変ホ→ハ→ロ、という音階にして、名刺代わりに曲に組み入れた。いささか不安定な、しかし蠱惑的な半音階的旋律を作ることができるこのイニシャルを、本人は「音楽的に幸せな名前」であるとした。
 この曲は、「ファシズムと戦争の犠牲者に」捧げられた。いっぽうで、作家イサク・グリンクマンへの作曲家本人の書簡によれば、「わたしが死んだ時に誰かが弦楽四重奏曲を捧げてくれるとは思えないので」、自分で自分に捧げる曲を書いた、としている。

■楽章

 第1楽章 ラルゴ ハ短調。冒頭からDSCH主題が登場する。沈鬱なロンド的楽章である。
 第2楽章 アレグロ・モルト ト短調。2分の2拍子のトッカータ。アタッカで(楽章間の切れ目なしに)演奏される。切り込むようなトッカータ主題に、強烈な情念を感じるだろう。ヴァイオリンで始まった主題は盛り上がりを見せた後、ピアノ三重奏曲の主題――めまいで揺動するような主題――にとって代わられる。前半部を回顧し突然終止する。
 第3楽章 アレグレット ト短調。中心主題は跳ねるようなDSCH主題で構成されているが、やがてワルツが出る。そののちに出るのはチェロ協奏曲第1番の第1主題である。次第に熱を帯びていく。
 第4楽章 ラルゴ 嬰ハ短調。激しい拒否を思わせるような和音三つで始まる。チェロ協奏曲第1番主題が出て来ては和音と重なる。「怒りの日」の旋律、交響曲第11番の旋律、ロシア革命歌の旋律、交響曲第10番断片、歌劇《カテリーナ・イズマイロヴァ》の旋律がそれぞれ染み出すように現れるが、和音強奏に打ち消される。
 第5楽章 ラルゴ ハ短調。フーガ。第1楽章後半の再現である。第1楽章に引き続き、沈鬱で喪失感を伴った主題が繰り返される。チェロのDSCH主題とともに、静かに沈み込むようにして終わる。

(up: 2008.2.14)
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