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EMI 制作・ワーグナー楽劇ボックスのローエングリンは何とケンペ指揮VPOの演奏。職人ケンペらしい、丁寧で熱の入った仕事である。なお当該ボックスにはホルライザー指揮SKDの《リエンツィ》が入っていてこれまた冷静だが大変結構。コストパフォマンスは高い。

 ▽ Richard Wagner
LOHENGRIN
ロマン的歌劇《ローエングリン》



■作曲 1846〜48年
■初演 1850.8.28 ワイマール宮廷劇場
      フランツ・リスト指揮による
■台本 リヒャルト・ワーグナーによる
■言語 ドイツ語
■時代 中世、10世紀前半
■場所 ブラバント公国(現・ベルギー) アントワープ

《楽器編成》
Fr. 3 Ob. 2 E.Hr., Cl. 2, BassCl. Fg. 3
Hr. 4 Tromp. 3 Tromb. 3 Tuba Tim. 2
1st Violin 16 2nd Violin 16 Viola 12 Cello 12 C.bass 8
Symbal Tambline Triangle Harp
Grockenspiel Side drum Organ


《おもな登場人物》
ハインリヒ国王 (バス) ドイツ国王。ブラバント公国に出兵要請にやってきて、ブラバントの世継ぎ争いに参画する
ローエングリン (テノール) 白鳥の騎士。白鳥曳く小舟にて颯爽と登場する。正しく「神懸かり的に」強い。名を聞かれるのを嫌がる
ブラバンドのエルザ (ソプラノ) 先代の遺児。姉。弟殺しの疑いをかけられる
ゴットフリート公 (黙役) 先代の遺児。弟。妖術により白鳥に変えられている
テルラムント (バリトン) 遺児二人の後見人だが、公国支配を狙う野心家。比較的素直で、妻オルトルートにすぐ乗せられる
オルトルート (メゾ・ソプラノ) フリーゼン族の血を引く妖術使い。絶えずエルザの邪魔をする。テルラムントの妻



■概要

 この、精神性にあふれる、ある意味ワーグナーらしい劇音楽は、台本こそ前作《タンホイザー》初演後わずか一ヶ月のちの1845年11月、ひとまずの完成をえて朗読会にかけられているが、このドラマに音楽が乗る道のりは容易なものではなかった。
 ワーグナーは当時、ドレスデンを主都とするザクセン王国宮廷歌劇場の指揮者として活躍しており、のちのマーラーのように、彼の作曲は指揮活動と並行して行われた。1846年にはワーグナーは作曲スケッチをはじめており、その年7月にはスケッチを完成させていたが、中途、グルックのオペラ上演の準備などに忙殺され、作曲活動は一時中断する。翌1848年、新年早々1月に彼の母ヨハンナが亡くなるが、それを序曲のようにして、この年彼は歴史的事件に巻き込まれる。
 1848年2月、パリでは二月革命が起こる。ドレスデンに居たワーグナーもその流れに無関係でいることはできず、革命派の組織にて論文をものし、翌49年ドレスデンにて市民蜂起が起こったさいには、市民軍側にたって戦に参加、のち指名手配を受けている。彼に初めて安定的な高収入の口を与えてくれたザクセン王国に居続けることはできず、フランツ・リストが宮廷劇場指揮者の座に就いていたワイマールへと逃亡する。リストはよく彼を助け、すぐにワーグナーはワイマールからスイスへと逃亡の旅に出るが、のちワイマールにての《ローエングリン》初演の際には、既に大家の名を恣にしていたリストが周到な準備を行い、タクトを握った。初演が計画された8月28日とはドイツ文化圏内の人にとっては特別な日・つまりゲーテの誕生日であって、その辺りにも《ローエングリン》初演を盛り上げんとするリストの細やかな心遣いが見られる。初演は総じて芳しい出来ではなかったが、リストはこの作品の偉大さを認め、また上演が重ねられるにつれて、その支持者は増えるばかりであった。

■内容

 第1幕
 第1場
 幕開きと共に、ドイツ国王ハインリッヒ1世が玉座についている。国王ははるばるブラバント公国に、出兵要請にきたのである。しかし、当のブラバントは跡継ぎ問題が紛糾していた。国王は、先王の遺児二人の後見で、かつてエルザと婚約をしていたテルラムントに尋ねる。テルラムントは、先代の遺児、姉エルザと弟ゴットフリートがある日連れだって森へ出た際、姉だけが帰ってきたこと、また、のち弟君を手を尽くして探したが手がかりがつかめなかったことを語り、姉エルザに弟殺しの表情を見たという理由で彼女を告発する。実はテルラムントは過去、エルザと結婚し王国を手に入れる算段をしていたのだがエルザに拒否され、そのさいに婚約を破棄、他公国の皇女にして妖術使いであるオルトルートを妻に迎えていた。実は弟ゴットフリートを白鳥に変えたのはそのオルトルートなのだが、そんなことはおくびにも出さず逆に、テルラムントはエルザを、邪教の妖術使いと通じた罪でも告発する。
 第2場
 テルラムントはエルザを告発し原告となっている。エルザは、身の潔白を主張するかのような純白の衣装で登場し、テルラムントの物言いには何の正当性もないことを訴える。さらにハインリッヒ1世が問うと、夢の中で出会った白鳥の騎士が慰めてくれた、という《エルザの夢》を語る。国王は、テルラムントとその「白鳥の騎士」との間で一騎打ちを行うことで裁きを発する以外に方法がないと吐露する。ファンファーレは鳴り響くが、何も起こらない。エルザは祈り始める。
 第3場 スヘルデ河。
 奇蹟が、起こる。スヘルデ河の川面に、一羽の白鳥にひかれて小舟が滑ってくる。乗っている人こそ白銀の甲冑を身に纏った「白鳥の騎士」で、一騎打ちの相手として遣わされてきたことを述べる。更にエルザの前に進み出て、一騎打ちに勝利なった暁には、エルザの夫となり、公国の支配者となることを要求する。また、名前も問うてはならない、と《質問禁止》の命を伝える。気もそぞろなエルザは細々と納得する。
 一騎打ちが始まる。剛勇無双の両者ではあれど、神の加護を得た白鳥の騎士が上手で、やがてテルラムントを打ち倒す。白鳥の騎士を喝采する声がひびく中、妖術使いのオルトルートだけが、白鳥の騎士に対して復仇のまなざしを当てていた。

 第2幕
 第1場 アントワープの城内。
 オルトルートとテルラムントがおり、先に一騎打ちに破れたテルラムントは、言うとおりにしたのに敗れてしまった旨、オルトルートに愚痴る。オルトルートはテルラムントに、白鳥の騎士の正体について疑念を抱くようにし向ける。テルラムントはそれを信用してしまう。エルザに、騎士から禁じられた禁断の質問をするようにたくらむ。
 第2場 
エルザがバルコニーに出たところを、オルトルートは自分の哀れさを訴え、気を引く。エルザはまんまとかかってしまう。取り込まれに成功したオルトルートは、エルザに対して、現在の幸せを信用しないように、騎士の素性を疑うように仕向ける。
 第3場 
夜明け、王がテルラムント追放の宣告を告げる。また、エルザと白鳥の騎士の結婚、騎士の公国支配の安堵、また援軍として王に従って東方へ赴くことなどが告知される。
 第4場
 結婚式典に向かう行列が、エルザを先頭として、進み始める。オルトルートが突然やってきて、先頭を譲れと押し込んでくる。エルザはつっぱねる。オルトルートは、白鳥の騎士の素性に関して、如何に怪しいかということを口を極めて主張するが、エルザは騎士を信じている旨明らかにする。騎士の館からファンファーレが鳴り始める。
 第5場
 歓声に迎えられて国王、白鳥の騎士が現れる、オルトルートは騎士の視線を浴びて動けなくなる。テルラムントが現れ、白鳥の騎士は魔法使いで、誤った神明裁判が行われた由、名と身分を明かす必要がある旨、を言い立てる。エルザは騎士への信頼と疑念の葛藤に苦しんでいる。テルラムントが彼女に近づき、騎士の体の一部を切り取れば、彼は去っていくことができなくなる、と告げる。

 第3幕
 第1場
 白鳥の騎士とエルザの結婚を祝う華やかな音楽が鳴り響く。城中の寝室。新郎新婦、付き人などが寝室にあらわれ、寝間の支度を調えると、付き人は寝室から去る。
 第2場
 二人きりとなって、白鳥の騎士はエルザに幸せか問う。エルザは、どのように答えるべきか迷う。騎士がもときた国へ帰っていくのではないかという疑念に苛まれるエルザは、迎えの白鳥がやってくる幻影のことを口にする。騎士はそれを躍起になって否定する。エルザは遂に、彼の名前を尋ねる。二人の間は破局を迎える。
 寝室にはテルラムントが忍び込んでおり、騎士にとびかかるが、あえなく打ち倒される。テルラムントは死ぬが、二人は既に別れざるをえない運命となっている。騎士は静かに、寝室を去る。
 第3場
 スヘルデ河。国王がザクセン騎士たちを従え登場する。テルラムントの死骸が運ばれてき、またやつれ果てたエルザもやってくる。不審が拡がるなか、白鳥の騎士が現れ、王とともに出征することができなくなった旨告げる。彼は、テルラムントを殺害したのが正当防衛であったこと、エルザが禁止されていた質問をしたこと、彼女が裏切ったことを言明する。また、エルザから問われた以上答えざるを得なくなったと前置きした上で、聖杯と聖杯騎士団の由来を述べ、また彼の父パルツィヴァールが騎士団の長であり、自分はその息子でローエングリンというものであるということを初めて、明かす。エルザは強い衝撃を受け、倒れる。
 ローエングリンは素性を明かした以上、聖杯のもとへ帰る必要がある。白鳥が小舟を曳いて現れる。彼はエルザに、太刀・指輪・角笛を手渡し、いつか帰るゴットフリートへ渡すよう伝える。
 去っていくローエングリンに、オルトルートが勝ったと思って快哉の声を上げる。ところがローエングリンが熱烈な祈りを捧げると、鳩が天空から舞い降りる。ローエングリンは自分の白鳥の鎖をはずしてやる。白鳥は一度水中に姿を消し、入れ替わりにゴットフリートが現れる。オルトルートは敗れたことを知り、声を上げて倒れる。ゴットフリートは新しいブラバント公国の王として、国王に挨拶している。朦朧たる意識のなか、エルザは夫の名を空しく呼ぶ。やがて彼女は息絶え、幕が下りる。


■付記

 胸塞がれる悲劇で、ローエングリンは去り、エルザは死に、「死による浄化」のような主題も何もなく、ただゴットフリートが帰ってくることだけが救いのある出来事である。むしろこうなれば後日談で、ゴットフリートがスッラ的、あるいはネロ的苛烈残虐王でブラバントが滅亡するような筋を書いてほしいくらいだ。考えてもみれば、テルラムントのような典型的な単純ワルを後見に選ぶ先王の息子、となると、やはりどこか「新生ブラバント公国」の先行きに不安を抱きたくもなるのである。
 なお、第3幕に、ローエングリンが語る「パルツィヴァール」とは、いうまでもなくのちに「舞台神聖祝典劇」として大作をなすパルジファルの主人公である。つまり時代背景を考えれば、パルジファルの方がローエングリンよりも前の物語である、ということになる。

(up: 2008.11.29)
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